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き い ち

グエン ホン ゴックさんへのインタビュー



久しぶりにインタビューをしました。

ゴックさんは、山口の職場の後輩です。

ベトナム出身で、障害者福祉の支援者をしています。

彼女のストーリーから、何かを感じていただけたら幸いです。



1なぜ福祉の仕事を選びましたか?


学生の頃、ボランティアをしていた。お寺に捨てられた子どもたちと関わっていた。もともと子どもが好きだった。福祉を知る最初のきっかけはボランティアの経験だった。

また、まだ幼いころ、祖母が脳梗塞で倒れ、左半身に障害が残った。日常生活に大きな不自由はないが、外出をすると、身体障害者の祖母に対し、周囲は冷たい視線を注いだ。それ以来祖母は約20年間ほぼ家から出られなかった。


祖母に寄り添っているだけではだめだ。社会を変えなければいけない。そう思った。

こういったことが福祉を選ぶきっかけとなった。


日本は高齢化率が非常に高い国であり、福祉が進んでいると思った。日本に来て、専門学校で介護福祉士の勉強をした。

実習で特養に行った。入居者さんたちと関わる中で、「幸せそうにしていない」という印象を持った。朝早くに起こされ、2時間近くもリビングで待たされ、トイレは決まった時間じゃないと行けない。何より交流が少ないと感じた。日本の福祉施設の実態を見て、ベトナムで思っていたイメージとのギャップを感じた。


「心の支援」を勉強したいと思った。介助技術は慣れれば次第にできるようになるが、心の支援は難しい。知的障害のある人は、自分のことを言葉で伝えることが難しい。支援者がしっかり観察して、気持ちを想像しなければいけない。

そして今は知的障害のある人が生活するグループホームで仕事をしている。




2あなたの仕事について教えてください。


知的障害のある人が暮らすグループホームで、食事の準備や夜間の見守りなど、日常生活を送るうえでの支援を行っている。


支援者と利用者に上下関係はなく、同じ立場で関わることが大切だと思っている。

身体介助はあまりないので、「心の支援」が大切だと思う。


ある利用者さんとの出来事として。その人は健康上の理由から水分量の制限がある方だが、知的障害があるため、制限なく飲もうとしてしまう。「次は30分後ですよ」などと声掛けをしても、納得できず、物を投げたりしてしまう。

初めは、なぜ伝わらないんだろうと悩んだ。

しかしそこであきらめず、信頼関係を築くために、その利用者さんとのかかわりにエネルギーを注ぎ、「あなたの身体を心配している」という気持ちを伝え続けた。

すると利用者の行動に変化が見られ、物を投げたりする行動がなくなっていった。そういった利用者の変化が見られることがうれしい。


利用者の障害特性に合わせて、支援者が変わらなければいけないと思う。また、支援者もストレスをためこまないようにしなければいけない。


また、印象に残っている出来事として。ある利用者さんから「あなたは健常者なんだから障害者の気持ちなんてわからないでしょ」と言われ、しばらく悩んだことがあった。もっと相手の立場を考えて、伝え方なども工夫したほうが良かったかもしれないと考えた。


やっぱり一番大切な仕事は「心の支援」だと思った。



・支援者がストレスをためこまないためには、どうしたらいいと思う?


ストレスの原因はいろいろある。支援がうまくいかなかったり、職員同士の人間関係だったり。その原因を突き止めて、少しでも良くなるよう改善すること。自分が変わらないと周りも変わらない。

私も高校生のころは、周りのせいにしていた。朝寝坊したことを母親のせいにしたり。けれど、良い先生に出会った。その先生は、とにかく周りの人のために行動し、先生自身も幸せそうだった。あれこれ考えすぎず、周りの人のために行動することが、結果として自分の幸せにつながると思った。福祉を選ぶきっかけになったボランティアを勧めてくれたのも、その先生だった。

受け身ではなく、自分が主体的に行動することが大切だと思う。




3今後の目標を教えてください。


以前は学校の先生になりたいと思っていた。けれど福祉の仕事をしていても、先生の仕事はできる。利用者さんと一緒にいろいろな経験をして、「興味を持ってもらう」ことが、先生の仕事だと思う。また、ボランティアや地域交流の機会をつくって、「介護福祉士になりたい」と、いろんな人に福祉に興味を持ってもらいたい。


そして、周りの人のために、積極的に行動したい。

例えば日本やベトナムだけでなく、アフリカの子どもたちなども、みんな学校に行けるようにしたい。そんな活動に参加したいと思う。

一人や数人で話していても社会は変わらない。若い人がたくさん集まる活動に参加したい。優しい社会にしたい。

引き続き日本でたくさん勉強し、成長したい。



【インタビューを終えて】

山口はゴックさんの仕事ぶりを近くで見ていますが、彼女から学びたいことは「主体性」だと思いました。

決して周りのせいにせず、自分が成長することで、周りを変える。

これは誰しもが意識していきたいですね。(山口)