No.004 菊間 千尋
【世界がもし100人の村だったら。自分の当たり前を覆される】
1.どうして福祉の仕事を選びましたか。(法政現福に入学したきっかけは何ですか) 小学4〜6年生頃に「もし世界が100人の村だったら」という本を読んだことがきっかけです。
その頃の私は自分の生きてる環境しか知らず、安全に住む家があることや毎日ご飯を食べられることは誰にとっても当たり前のものだと思っていました。
しかし、その本には、例えば「20人は栄養がじゅうぶんではなく1人は死にそうなほどです。でも15人は太りすぎです。」など、私の当たり前を覆す本物の世界が書かれていた。
純粋にこんなにたくさんご飯を食べられない人がいるんだと知って、衝撃を受けました。
生まれた場所で差が決まってしまう、例えばここがアフリカだったら今みたいな生活はできない。それが不公平だし不思議だと感じました。
おこがましい考え方だけど、「恵まれている側が困っている人たちに何かしなきゃいけない」と思いました。
小学6年生の時「困っている人を助ける仕事」を探したところ「13歳のハローワーク」という本に社会福祉士が紹介されていました。
これがまさに自分のしたい仕事だ!と感じ、福祉職を意識し始めました。
小学校の卒業文集にも「社会福祉士になる」と書くほど、強い思いでした。笑
【それぞれの専門性を発揮し、意思を尊重した支援を行う】 2.あなたの仕事について教えてください。
公務員(福祉職)として働いています。 公務員を選んだのは福祉分野問わず、働ける場所が多いということ。あとは生活保護に興味があったからです。(社会福祉士実習で市役所に行ったことがきっかけ)
いまは身体障害者の入所施設で支援員をしています。
遷延性意識障害という重度の意識障害や機能障害を持つ方も入所しており、発作や定時の喀痰吸引にも対応していく必要があります。
そのため看護師は24時間勤務。医療との連携も密にしなければいけません。
連携の部分で難しいのは、福祉職と医療職は専門性の違いがあること。
利用者さんの希望を叶えたい福祉職と健康を守りたい医療職、食事制限や治療方針の面など、お互いの専門性を発揮しながら妥当な着地点を見つけるのが難しいです。
私が仕事で大切にしていることは、利用者さんの意思を尊重するということ。
その時その時で、その方が何をしたいのかどうしたいのかの確認を取りながらケアを行なうように心掛けています。 意思表現が難しい方に対しては、こちらが行う全動作を声に出して伝えて反応を伺います。
例えば、「オムツ替えますよー」「ズボン脱ぎますよー、横向きますよー」という風に。
意識障害の人の中には、こちらの動作1つで表情が変化する方もいるので意味を考えたりしながらケアを行います。
【なんで?を追求し続ける。ゼミで学んだ当事者に寄り添う姿勢】 3.大学での学びが仕事で生きていると感じるのはどんなときですか。
相手の立場になって考えるということです。 ゼミで「当事者には決してなれないけど、それでも寄り添い続けること」がとても大切なことだと学びました。
利用者さんからの暴言や嘘、介護拒否が続くと、それが当たり前のことになってしまい、段々と原因を考えることをやめてしまいがちです。
しかし理由がわからないことをされ続けると、職員もその利用者さんと関わることにストレスを感じてしまう。
利用者さんも相手に思いが伝わらないことで苦しい思いをすると思います。
そうならないためにも、なんでそのような言動を取るのか、最後に関わりを持った職員の対応に問題がなかったか、障害特性か性格か…。
なるべく多くの疑問点を挙げて職員同士で連携しながら観察し考え続ける。気づきや可能性は共有する。
すると原因が見えてくるので、余裕を持った関わり合いができると思います。
何かがあったとき「なんで?」が最初に思い浮かぶことや、考え続けること。その姿勢を確立できたのはゼミでの学びがあったからだと思います。
【手話、介助方法、スキルを持って長く仕事を続けていく】 4.いま興味を持っていることやテーマは何ですか。
手話に興味を持っています。大学時代も手話サークルに所属していました。
今までずっと続けてきたことだから、手話検定に挑戦して資格という形にしてみたい。
手話言語条例が制定されたこともあり、今後もニーズのある検定だと思います。
あとは、体を壊さない介助について。最近介助をする時にすごく手首が痛くなるんです(笑)。
長くこの業界で働いていくためにも、身体を大切にする介助方法を習得していきたい。
【いつかは刑務所のワーカーに。目標を持って、毎日を楽しく過ごす】
5.今後の目標を教えてください。
障害、児童、生活保護の分野で働き、いつか刑務所のワーカーになること。
いまは障害分野で働いていますが、私はまだ本当に興味のある分野が見定められていません。
これから様々な場所で働いた上で、本当にやりたいことを見極めていきたいとの思いがあります。
そしていつかは刑務所で働きたい。
その思いは大学2年生の時にゼミのFWで横浜刑務所に行ったことが影響しています。
罪を犯した人は刑が終わって釈放されたとしても、周囲の目が厳しくて社会の中に居場所を作れない。
本人が更生したいという気持ちがあってもその希望を叶えることが難しい。
結局刑務所の生活の方がまだ良いと再犯をしてしまう人も多いそうです。
命があって生きているはずなのに、社会的に死んでしまった人を再び社会の輪に戻していくこと、私は究極の福祉だと考えています。
そして、社会の輪に戻る支援をする為には、多角的な視点から現実を見ていかないといけないと思う。
そういった意味でも多くの現場で働いて経験を積みたい。
将来は社会復帰のつなぎ役としてのワーカーになりたいです。
あと、私は今が1番楽しいって思っています(笑)
自分がしたいことを存分にできるお給料や時間があること、職場の人間関係が良好であることが大きいです。
いい支援は支援者の生活が充実していて質の良いものでないとできないと感じます。
日々に余裕がなく追い詰められていると、利用者さんに顔色を伺われたり、心配されたりする。
それは支援をする者として良くないことだと思う。
そのためにもきちんとストレスは発散する。我慢はしない(笑)。
毎日を楽しく過ごしていくことや目標を大切にしながら、これからも仕事に励みたいです。