No.017 加藤里菜
【もともと興味があった児童福祉から逃げたくない】
1.どうして福祉の仕事を選びましたか。(法政現福に入学したきっかけは何ですか)
中学生のときは保育士になりたいと思っていました。高校生くらいからは、たぶんテレビか何かで知ったのだと思いますが、児童養護施設で働きたいとも思うようになった。
合気道を習っていたのですが、そこでの子どもたちとの関わりの中で、自然と児童分野に興味をもつようになったのだと思います。そんな中で、保育の専門学校も考えましたが、現代福祉学部への入学を決めました。
サークルは児童ボランティアサークルに入りました。そこで、挫折を経験しました。子どもたちと、また自分自身ともうまく向き合うことができなかった。サークルは半年くらいでやめました。
学年が上がり就活の時期には、福祉だけでなくいろんな民間企業も受けました。倍率の高い企業からも内定を頂くことができました。その時に「民間企業にも採用してもらえるんだ」と思ったら、福祉の仕事に就く決心がつきました。
サークルで挫折を味わったけれど、もともと興味のあった児童福祉から逃げたくない、なかったことにはしたくない。4年間の学びを仕事で生かしたいという思いも強かったです。
サークルで挫折の経験をしたとのことですが、いくつかエピソードを聞いてみました。ある日の活動でのこと、子どもたちと関わるとき、加藤さんはどちらかというと受身な姿勢で子どもたちが来るのを待っていました。すると先輩から、積極的に関わるようにと指摘をされた。確かに、そうするべきだったのかもしれない。しかし私(加藤さん)はあくまでボラであり毎回来られる訳じゃない。対してそこにいる子どもたちにとってこれは日常だ。その日常に、たまにしか来ない人が介入しすぎていいものなのか、色々と考えたといいます。
聞き手(山口)としては、加藤さんの感受性の一つの側面を見れた気がしました。支援者として、強い「頼もしさ」を感じました。相対する人との距離感の取り方とは積極的にいけば良しで片付けられるほど簡単なものではなく、探り探りになるのは必然であり、それは相手の表情を見たりニーズを探る努力をしているということでもあると思うので、逆に臆せず積極的な関わりができてしまう人のほうこそ危うさを山口は感じてしまいます。
【子どもの語りにしっかり耳を傾ける】
2.あなたの仕事について教えてください。
児童養護施設のケアワーカーです。児童指導員とも言われます。資格としては社会福祉士と保育士を持っています。
施設において、家庭で行われているような子どもとの関わり、洗濯や食事の支度等の家事が中心的な業務になります。また、学校に行って面談や保護者会に参加したり、薬を飲んでいる子どももいるので病院との連携もあります。
仕事をしていてうれしかったことは、子どもたちから「話をきいてくれる人なんだ」と言われたことです。私は仕事をする上で大事にしていることの一つが相手の話をしっかり聞くことなので、そう思ってもらえていたことが嬉しかった。
逆に大変なことは、子どもたちから「結局大人が大事なのは子どもより家事でしょ」なんて言われたりすること。「大事にされていない感」に、子どもたちはとても敏感です。また、暴力や暴言も対応が大変です。包丁を向けられたこともありました。
子どもたちが今までされてきたことなんだと頭ではわかっていても、心が追い付かない時もあります。
【多様な考えをもつ人たちとの「話し合い方」を学ぶ】
3.大学での学びが仕事で生きていると感じるのはどんなときですか。
法政での4年間があったから今の自分があると、胸を張って言えます。
大学では、本当にいろいろな経験をさせてもらいました。ゼミ、ソーシャルワーク実習、海外研修や、国内研修(大学が補助金を出してくれる制度)には3回も行かせてもらいました。
そして、そういった学びを一緒にできる友達がいたことが大きかったです。一見「めんどくさいこと」を、一緒にできて本音で対話できる友達の存在って本当大きいと思います。
ちなみに国内研修では、釜ヶ崎に行って貧困問題について考えたり、群馬の山奥に行って内観したりしました。一週間誰とも話さずスマホにも触れず、世間から離れたような感覚はおもしろい経験でした。
ゼミは湯浅誠教授のゼミでしたが、そこでの学びも大きい。物事の考え方、問い方、組織や制度などの仕組みはどうなっているのか等俯瞰して考える視点はゼミで培いました。
それから、一緒に取り組む人たち(ゼミの時はゼミ生)とどうやって同じ方向を見て、取り組んでいくのか。一人でできないことを誰かと一緒にやることは本当に難しい。今の職場でも同じ問題にぶつかっています。
ただ、そういったことをどう解決していくのか、話し合い方、伝え方を学んだような気がします。思い返すと、「話し合い方」「伝え方」って、今まで教えてもらったことがなかった。社会に出る前に、大学でそこを学べてよかったと思っています。
【幅を広げたい】
4.いま興味を持っていることやテーマは何ですか。
自分が楽しいと思うことをたくさん見つけることです。
それから、仕事関係では、本を読みたいと思っています。子育て本から、児童福祉の専門書等まで幅広く、勉強したいと思ってます。
【文章を書く】
5.今後の目標を教えてください。
私は文字におこして整理したい派なので、今の児童養護施設で働いているということを、論文のような形で文章にしたいです。社会福祉士の勉強をしているときにいろいろ体系的に学んだけれど、忘れているし曖昧なことも多いので、きちんと理解するためにも文章にしたい。
やはり現場にいるだけだと煮詰まってしんどくなってしまう。定期的に現場から離れてリフレッシュするためにも、文章を書いていきたいと思っています。