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き い ち

No.023 小嶋 泰之(地域包括支援センター/社会福祉士)


 

【他業界を経験し、福祉に戻ってきた】

1.どうして福祉の仕事を選びましたか(法政現福に入学したきっかけは何ですか)

正直なところ、高校時代は、具体的な夢や目標はなかった。 いろいろな大学を受験する中で、合格した法政大学現代福祉学部に入学を決めた。

福祉ってなんだろう?と思いながらも、法律や政治経済といった学部より、高齢者も増えているし、

今後伸びそうな学部だな、そんな印象を持っていた。

2002年に大学生になったが、現代福祉学部ができたのが2000年と、新しい学部だったことも、魅力的に思えた。

大学時代は、「侍スピリッツ」というボランティアサークルに入った。特別支援学校に行き、知的障害のある子どもたちと遊んだり、キャンプに行ったりした。 社会福祉士の実習も、知的障害の人の作業所を選んだ。 サークルや実習、バイトなどは積極的にやったが、授業にはあまり出ず、単位さえ取れれば、というタイプの学生だった。(笑)

4年生になり、就活を始めなければならない時期になったとき、今まで障害の人たちと交流してきたが、そういった福祉的なことと、それを仕事にするということが、あまり結びつかなかった。 周りの友人たちが、一般企業への就活を進める中で、自分もそうしなければ…という焦りを感じた。

兄や姉の結婚式に参列したことがきっかけとなり、華やかなブライダル業界に惹かれ、そこに就職した。 しかし、華やかなのは表向きの姿で、現実は過酷だった。

冠婚葬祭全般やっていることもあり、昼は結婚式場で料理を出し、夜は葬儀場での対応に追われた。残業時間は月に70時間を超えていた。 2年間は頑張ったが、疲れがきた。 この業界で、頑張り続ける意義が見いだせなかった。

次になにをやろうかと考えた時に、現代福祉学部で学んだことを思い出した。 一般企業で利益を追求することより、利益ではないものを追求する仕事の方が、自分には向いているのではと思った。

社会福祉協議会の障害者センターで3年ほど働いた。 この時30歳くらいで、結婚をした。 安定した仕事を求め、転職をして、練馬にあるデイサービスで相談員として4年ほど働いた。ケアマネジャーの資格もとった。

とても恵まれた職場だったが、長女が生まれたため、なるべく自宅から近い職場のほうがいいと思い、今の地域包括支援センターに転職した。

初めから福祉の仕事と決めていたわけではなく、まったく違う業界での仕事を経て、また福祉に戻ってきた。

そんなイメージになる。

【在宅介護の闇の部分とも向き合う】

2.今のお仕事について教えてください

地域包括支援センターの職員。 介護保険のことや、必要に応じて社会資源につなげたり、簡単に言えば、地域の高齢者のなんでも相談やさん。といったイメージ。

個人への対応と並行して、介護予防の運動を普及啓発したり、最近だったらオレオレ詐欺対策の講座を警察を招いて開催したりと、地域に対しての働きかけも行う。 ちなみに、担当する地域の高齢者は約6千人にのぼる。

デイサービスの相談員をしていたとき、基本的に相談に来るのはデイサービスを希望している人だった。

今までは、ある意味「うまくいっているケース」しか見てこなかった。

しかし地域には、認知症の進行や、お金の問題など、様々な事情で、デイに行けない人、行きたくない人、そういった人がたくさんいる。 高齢者福祉、在宅介護を向き合おうと思ったら、「うまくいっていないケース」、在宅介護の闇の部分と向き合う必要性を感じた。 そうした理由から、地域包括支援センターを選んだ。

社会福祉士の仕事の本質は、こういったところなのではと思った。

地域で仕事をしていて思うことがある。それは、仕事をしていて「ありがとう」と言われなかった日は一日もない、ということ。 それを言われたいわけじゃないが、これがこの仕事の醍醐味かなと思う。

誰かの役に立っているという実感が、毎日ある。 地域の人たちとの信頼関係を大切に、真摯に・優しく・迅速に対応することを心掛けている。




【十人十色の幸せの形】

3.大学での学びが仕事で生きていると感じるのはどんなときですか

大学の環境として、やっぱり、優しい人、誰かを思いやる心を持っている人が多かった。 そういう友人たちとの時間や、障害の人たちとの交流の中で、価値観や、多様性といったことを、学ぶというよりは感じることができた。 10人いれば10人違う幸せの形がある。 「福祉マインド」を培うことができたように思う。



私が現代福祉学部に入学したとき、周りから「偉いね」「優しいね」と、もてはやされたことを覚えている。また、今もそういう風潮はある。 しかし、これだけ高齢者が増え、多様性の時代になった今、福祉や介護をやることは、もはや「当たり前のこと」にならなければいけない。

例えばラーメン屋さんが、自分の仕事を、「こんなにおいしいラーメン作って、すごいだろう!」と、別に語ったりしないように。



福祉をしている自分が偉い、みたいな時代は、もう終わったと、私は実習生に対してよく話している。 気持ち・感情的なことでなはく、当たり前に、より良い実践を追求していこうと。





【生活が破綻した人をどう地域で支えるか】

4.いま興味を持っていることやテーマはなんですか

地域包括支援センターで働いていると、虐待やセルフネグレクト、ゴミ屋敷状態で生活が破綻している人、そういった「在宅介護の闇の部分」と日々向き合うことになる。 こういう人たちをどう支援していくか、といったところに今は興味を持っている。

例えば、ゴミ屋敷状態の家に住んでいる人にしてみれば、周りにはゴミに思えても、本人にとっては全部必要なもの。

周りには明らかに生活が成り立っていないように思えても、本人は別に困っていないし、支援を求めてもいない。 じゃあ何ができるかとなれば、見守るしかない。

安否確認を続けていると、たとえば地震や台風、病気や近隣とのトラブルといった形で、支援者が介入できそうなきっかけが生じることがある。 そうしたきっかけを逃さず、適切なタイミングでケースを前に進めていく。

地道でも、地域に寄り添ったより良い実践を、今後も取り組んでいきたい。


【焦る必要ないと伝えていきたい】

5.今後の目標を教えてください

社会福祉士会に所属しているが、今度学会で実践を発表することになった。 また、昨年から職場で社会福祉実習生の受け入れを始めた。

これまで紆余曲折を経ながら福祉の仕事を続けてきて、ようやく自分の中で、福祉の仕事についてまとめたり、振り返ることができるようになってきた。 誰かに、自分の仕事を伝えられるようになってきた。

私のように、福祉の志のようなものを初めから持っていなくても、楽しくやっているということを、学生に伝えていきたい。 迷ってる学生って、実はたくさんいるんじゃないかなと思う。 焦らなくて大丈夫だよと伝えたい。

今までの自分の経験を発信していくことにも、今後は力を入れていきたいと思っている。







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